自分でも少々しつこいと思う(笑)

ちょっと古い記事ではあるが、

http://torino2006.nikkansports.com/paper/p-ol-tp5-060205-0010.html
荒川静香物語」漫画に


トリノ五輪でメダルを狙うフィギュアスケート女子代表の荒川静香(プリンスホテル)が漫画になることが4日、分かった。明日6日発売の月刊少年ジャンプ(集英社)3月号で「荒川静香物語」(漫画・大内冬樹)が掲載される。「天才少女」と呼ばれた幼少時代を振り返る物語で、苦手だった2回転半ジャンプの失敗をどう乗り越えたか、などが描かれている。昨夏に原作者の工藤晋さんが発案し、「もっとフィギュアを知ってもらいたい」という荒川の思いと合致した。工藤さんは「栄光の軌跡ではなく原点を知ることで、荒川選手の魅力や競技の面白さを知ってもらえたら」と話している。
(太字は引用者による)

で、読んで見ました、その「荒川静香物語」。もー、ツッコミどころ満載で。


例えば6ページ目(381ページ)、注釈にはイナバウアーのことが以下のように説明されている。
(C)大内冬樹・工藤晋/月刊少年ジャンプ2006年3月号/集英社

イナバウアー上体を反り返らせて滑るテクニック。
頭が氷につくほど背中を反らす選手は、荒川選手以外にいない。

はい。早速大間違いです。わざわざ欄外に注釈入れるのだから、普通事実を入れるだろ。原作者はちゃんと取材してるのか(苦笑)
マンガ原作者ってのもピンからキリまでいるわけだが、実在の人物と競技をテーマに原作を書くわけなのだから、もう少しちゃんと仕事しろよ。あまりに初歩的な誤りでしょ。「もっとフィギュアを知ってもらいたい」なんて、ホントは毛ほども思っていないんじゃないの、と邪推してしまうほどだよ?(ホントは邪推じゃないんだけどね。かつて現場にいた身としては、こういうことがよくあるということはよ〜くわかってるから)


続いて8ページ目(383ページ)、2004年の世界選手権のフリー演技、どこかの国(ライバル国)のひと(スケート関係者?)のセリフ。
(C)大内冬樹・工藤晋/月刊少年ジャンプ2006年3月号/集英社

優勝のプレッシャーがかかるこの場面で
アラカワが苦手とするトリプルアクセルを決められるものか!

え、トリプルアクセル跳んだこと、ありましたっけ? 跳べる跳べないの話ではなく、そういうプログラムでしたっけ?(違います)
荒川選手がトリプルアクセルを跳ばない(もちろん384ページにあるように「必ず跳ばなければならない」技でもない)選手であることはわかっているハズなのでは。物語のクライマックスとしてトリプルアクセルという「大技」を取り上げたかったのは理解できなくはないが、それなら「浅田真央(もしくは中野友加里)物語」にでもしたらよかったのにね。そのふたりなら跳ぶから。


「★この物語は、事実を基にフィクション化したものです。」と欄外(382ページ)にあるけど、これは明らかな事実誤認があった場合、それをあらかじめ正当化するためのエクスキューズなのだろうね。恥ずかしくて途中でネームは読み飛ばしてしまった。
この大内・工藤コンビは、この作品以外にも、中村俊輔選手とか上村愛子選手とかのアスリート物マンガを手がけているようだが、原作者の取材姿勢がこれでは、他の作品の質も推して知るべし、かな、と(でも、現場に問題意識は、きっとない。むしろこんなことを言っても煙たがれるのがオチ)。絵は嫌いじゃないので、ちと残念だけど。