恥の全国発信

「喜んだ」発言でおわび
小坂憲次文部科学相は六日、トリノ冬季五輪のフィギュアスケートで金メダルとなった荒川静香選手が帰国報告した際、ライバルのイリーナ・スルツカヤ選手(ロシア)の転倒を喜ぶ発言をしたことについて謝罪するコメントを発表した。
民放が四日の番組で発言部分を放映したところ、文科省に電子メールでの抗議が数十件あったためで、「配慮を欠き反省している」とした。
小坂文科相は、二月二十八日夜に荒川選手が同省大臣室を訪れた際の懇談で、競技の最後に演技をしたスルツカヤ選手が転倒して荒川選手の金メダルが決まった時の感想を「人の不幸を喜んじゃいけないけれど、こけた時は喜びましたね。『これでやったー』と、ものすごい喜んだ」と述べていた。
(東京新聞2006年3月7日朝刊・社会面より)

この件についてテレビ(TBS「きょう発プラス!」だと思う)で、恵俊彰山田五郎両名が「気持ちは分かる」とコメントしていたが、そんな気持ち、わからんし、わかりたくもない。彼らは、「荒川選手はコーエン、スルツカヤ両選手が転倒したから優勝できた」、とでも言いたいのだろうか*1
惜しくも転倒してしまったり、ミスをしてしまった選手たちが、もしノーミスの演技を行うことができたのなら…その素晴らしい演技は、我々にどのくらいの感動を与えてくれたことだろう*2。自国の選手の順位やメダルの色にこだわるばかりに他国の選手の失敗を喜ぶ前に、むしろ世界のトップレベルの選手がこの機会にベストの演技を見せることができなかったことを残念に思うべきなのではないかと思う。
いつからこのような恥っさらしな発言がおおっぴらに、それも公共の電波に乗って無神経に流されるようになったのだろう。少し前の時代なら、この手の発言は「島国根性丸出し」と揶揄されたものだが、最近は誰も気にならなくなってしまったのだろうか*3
同日の芸能ワイド面(いわゆるテレビ欄)にはこんなコラムもあった。

日本人の「気」が勝った
今回のトリノオリンピック、メダルは荒川選手の金ひとつだけ。この金は彼女の努力もさることながら、日本人の気持ちが取らせた金でもある。というのも、フィギュア競技まで日本のメダルはゼロ。コーエン選手が二度転び、荒川選手が素晴らしい滑りを見せてくれた。あとはスルツカヤ選手の滑りで、メダルの行方が決まる。この時、日本中がスルツカヤ選手に「転べ!」と念を送った。だから、どうでもいいようなところで尻もちをついた。解説者が「プレッシャーにつぶされた」と言っていたが、違う。日本人のメダルが欲しいという「気」が、転倒につながった…と私は

*1:「気持ちは分かる」時点で恵と山田も小坂大臣と同レベル。口に出す出さないの問題ではないのだ。[3/9追記]コメント欄において、「山田五郎氏は『気持ちは分かる』発言の後に、『しかしそれは荒川選手の優勝にケチをつけることになる』ということにきちんと言及していたはず」とのご指摘をいただきました。確かにそのような発言があったと記憶しております。「気持ちは分かる」発言に対して脊椎反射的に反応してしまった点について、思慮が足りなかったことをお詫び申し上げます。

*2:こう書いておいてなんだが、自分は「感動をありがとう」という言葉が虫酸が走るほど嫌い。特にメディア側からの押しつけがましい「感動をありがとう」発言には殺意すら覚えるほど。

*3:思えば森前総理の「神の国」発言あたりから、おかしくなってきたような気がする。