東京新聞9/8付朝刊・経済面より

トレンド ビジネス編
「反中・反韓」マンガ本 若者中心にヒット連発


中国や韓国に対し、歴史認識や対日関係について厳しい姿勢で臨む「反中・反韓」マンガ本が、若者を中心に人気となっている。関連書籍を含めて八十三万部を売り上げた作品もあるほどだ。出版社側は、小泉純一郎首相の靖国神社参拝などで対中韓関係がこじれた現状を商機ととらえ、さらなるヒットを狙っている。
小泉首相靖国神社に参拝するのか。マスコミや国民が、八月十五日参拝の可能性を探っていた同月上旬、全国の書店に並んだのが「そして中国の崩壊が始まる」(千四百二十九円+税、原作・井沢元彦、漫画・波多野秀行)。中国の靖国問題の見方や中華思想、環境汚染など同国の歴史や現状を描いた作品だ。
発行者の飛鳥新社によると、初版は三万部だったが、八月第二週の三省堂書店週間ベストセラー「一般書」部門で七位に入る滑り出しの良さを見せ、二万部の増刷を決めた。「三万部売れればヒット」と言われる現在の出版業界では早くもヒット作品の仲間入りだ。
同社は昨年八月十五日にも「マンガ中国入門 やっかいな隣人の研究」(千五百円+税、漫画・ジョージ秋山、監修・黄文雄)を発売し、十八万部を売り上げている。
この上を行くのが「マンガ嫌韓流」(0五年九月一日発売、発行・晋遊舎、千円、著者・山野車輪)のシリーズ。日韓併合などの歴史や竹島問題を描いたこの作品はインターネット上で話題となり、若者を中心に四十六万部の大ヒット。続編と三冊の関連書籍を合わせると計八十三万部だ。
同社編集局第一編集部の丹下晃秀さんは「『嫌韓』という概念はネット上では昔からあったが、書籍だと、知識がある人向け以外には『韓国を知りたい』という需要に応える商品がなかった。そこでマンガで出し、二十−三十代男性らに売れた」と説明する。「文化事業をやる意識はない。この本でも『韓国は許せない』などの風潮を盛り上げる気はなく、売れるものを出すだけ」とビジネスチャンスを強調する。
一方、反対の立場から書かれたのが「『マンガ嫌韓流』のここがデタラメ」(五月十日発売、発行・コモンズ、千五百円+税、著者・太田修、朴一ほか)。「マンガ嫌韓流」が取り上げた話題に活字で反論している。
これまでに六千部の出荷とヒットには至っていないが、コモンズの大江正章社長は「仮に売れなくても出すべきだと思った。出版社は社会に問題提起すべきだ。十代後半から二十代の人に読んでほしい」と話している。
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キーパーソン 飛鳥新社出版部 畑北斗さん(34)
中国問題で需要とらえる


「そして中国の崩壊が始まる」を社長直轄事業として担当したのが、飛鳥新社出版部の畑北斗さん(三四)=写真*1
「皆が読みたい本をタイムリーに出すのがうちの会社。八月は中国問題が盛り上がる」と話す。
歴史問題などで日本を批判する中国に対する若者らの不満を、そうした本への需要としてとらえた。
日中関係に注目を集める要因を作った小泉首相は九月に退陣するが、「中国に対する違和感が払しょくされない限り、ビジネスチャンスというのか、本を買ってくれる人はいる」と次を狙う。

お客さんが求めるモノを提供するのは商売のキホンであるからね。逆に言えば「『マンガ嫌韓流』のここがデタラメ」が出荷六千部にとどまっているのにはそれなりの理由があるってこと。活字による反論、「マンガ嫌韓流」より五百円高い価格、「十代後半から二十代の人」に読んでもらいたいのならコモンズの社長さんは「仮に売れなくても出すべきだ」などと最初から負けを覚悟したような発言をしてないで、売れるためには(=より多くの読者に読んでもらうためには)どうしたらよいか考えてもらいたいものだ。
それにしても、出版社側はあくまでビジネスとして嫌韓・嫌中本を売っているわけだけど、これらの本をアマゾンで予約してランキングを上げたり、何冊もまとめ買いしたりしてせっせと布教活動に勤しんだりした嫌韓・嫌中本愛読者の方々は自分たちの営業・広報ボランティア活動について今どう思っているのだろうか。儲かったのは出版社だけなのに。ま、踊りたいひとが勝手に踊るのは構わないけどね。同じ阿呆なら踊らにゃ損々ってか(と、見てるだけの阿呆が言ってみたりする(笑))。

*1:写真は本紙のみ