東京新聞6/14付朝刊・特報面より

カナダの「テロ計画犯」逮捕をめぐる誤解


カナダで今月初め、テロリストとみられる17人が3トンの爆薬材料を用意したとして逮捕された。日本でもこの事件を例に共謀罪の必要性を説く見方が出ている。だが、日本で同様の事件が起きた場合、共謀罪が特効薬になるのか。あるいは、なければ「テロの野放し」につながるのか。

共謀罪関連でメモ。カナダで起きた事件の記事はこちら(googleのキャッシュ)。結論から言えば特効薬にはならないし、テロの野放しにはつながらない、らしい。

この事件後、日本国内でも、今回の摘発が(1)反テロ法に基づく令状抜きの盗聴やネット監視(2)おとり捜査(3)爆弾材料の所持(4)同法に含まれているテロ計画−−−の共謀罪によって成功し、「共謀罪のない日本では処罰できない」という論調が流された。

しかしながら、共謀罪ができたとしても、日本では犯罪容疑がないにもかかわらず司法当局の判断で行う盗聴(行政盗聴)は認められておらず(盗聴法が認める範囲の盗聴には令状が必要)、麻薬犯罪を除いておとり捜査は認められていないので、共謀罪の有無と今回の捜査手法は無関係。また、犯人はすでに爆弾の材料を準備しており、計画段階ではなく次の段階での摘発で、共謀段階の摘発でもなかった。つまり、共謀罪では処罰できない。
ただ、共謀罪のない日本でも、今回のような爆破テロ計画は、爆発物取締罰則の適用によって予備段階での取り締まりは可能、とのことだ。

共謀罪推進の根拠として「共謀罪がないとテロに対し無防備」という意見は根強いが、そもそも同法新設の根拠となり、日本が署名した「国際組織犯罪防止条約」はテロ対策を目的としているのだろうか。
山下弁護士はこう話す。
「この条約ができたのは米中枢同時テロの前の二〇〇〇年。元来、麻薬や銃器などマフィアや暴力団対策が念頭にあった。米国がその後、この条約をテロ対策に使おうとしたのは事実だが、もともとの趣旨は違う。最近はその点をはき違えた議論が多すぎる」