遺骨鑑定関係

http://d.hatena.ne.jp/claw/20050310 より
・・・北朝鮮の言うことだからって、なんでもかんでも厨房のようにうかつに「捏造」と決め付けると、かえって揚げ足をとられるという罠。


日本政府側は細田博之官房長官が会見で、記事発表後に吉井氏から改めて話を聞いたことを明かした上で、
「『ネイチャー』の記事は捏造されたものだ。吉井講師は『自分が言っていないことを書かれた』と言っていた」


細田発言に対し、記事を書いた『ネイチャー』のデイビッド・シラノスキー記者が初めて口を開いた。
「捏造なんてするわけがない。結果的に北朝鮮にとって有利な印象の記事になったかもしれないが、私は火葬された骨をどうやってDNA鑑定するのかに科学的な関心があり、吉井氏に電話して取材を申し込んだだけだ。彼は私の質問に対し、科学者として論理的に答えてくれた」


当の吉井氏を取材したところ――。
「政府からも、警察からも、大学からも、この件についてはコメントするなと止められている。だから話せないんだ」

で、細田官房長官の言う「Nature」が記事を捏造した根拠であるところの、吉井さんが「言っていないことを書かれた」のは記事のどの部分であったのかが気になるところです。細田発言はその部分を具体的に示していないのですが、町村外務大臣の発言に以下のようなものがありました。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000516220050223001.htm
第162回国会 外務委員会 第1号(平成17年2月23日(水曜日)) 会議録 町村外務大臣の発言(抜粋)


横田めぐみさんの遺骨とされるものの一部から別人のDNAが検出されたとする鑑定結果について、本件のネイチャー誌から取材を受けた関係者にも事実関係を確認したところ、取材においては、焼かれた骨によるDNA鑑定の困難性について一般論を述べたものであって、鑑定結果が確定的でない旨や、あるいは汚染された可能性がある旨応答した事実はなかったという返事を受けているということだけちょっと申し添えさせていただきます。

「焼かれた骨によるDNA鑑定の困難性について一般論を述べたものであって、鑑定結果が確定的でない旨や、あるいは汚染された可能性がある旨応答した事実はなかった」とのことが、細田官房長官が指摘する吉井さんが「言っていないことを書かれた」部分なのでしょうか。「Nature」の記事から該当すると思われる箇所を引用すると(カッコ内は意訳)

Nonetheless Yoshii, who has no previous experience with cremated specimens, admits his tests arenot conclusive and that it is possible the samples were contaminated.
(にも関わらず、火葬されたサンプルを分析した過去の経験がない吉井は、彼の検査は決定的ではなく、サンプルが汚染されている可能性もあると認める。)

「admits(認める)」の部分が焦点でしょうか。しかしながら、もし吉井さんがこれを「言っていない」として、彼は検査は決定的で、サンプルが汚染されている可能性はないと断言することができるのでしょうか。「焼かれた骨によるDNA鑑定」が「一般論」として困難であるのならば、いずれにせよ今回の鑑定結果の特異性が際だってしまう気がしますが。
今回の場合、鑑定結果そのものより、その鑑定結果をもとに「遺骨は偽物」と、あらかじめ用意されていた答えに沿うかのように断定してしまった政府のミス(よく言えば勇み足)であったとしか言いようがありません。時すでに遅しですが。「Nature」への「捏造」呼ばわりや、吉井さんへの口止めなど、傷口を広げているとしか考えられない対応など、かの国のことを嘲えません。